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山頂の砦の中のホッとする感じの村
Grožnjan/Grisignana
グロジュニャン/グリジニャーナ
(クロアチア)♦♦

伏の激しい丘陵が覆うイストラ半島北西部の山中には、クロアチア領となったイタリア的な小さな村が点在している。
 イタリア名でグリジニャーナ(Grisignana)としばしば呼ばれるグロジュニャンは、その代表のひとつだろう。
 数年前に高速が開通するまではトリエステとプーラを結ぶ幹線であった国道21号線が、半島に西から深く切れ込むミルナ川の渓谷を渡る要衝の地、そこを見下ろす山の上に見える正円形の砦のような村がグロジュニャンだ。
 14世紀にヴェネチア共和国の内陸イストリア北部地方の中心地となり、城壁と跳ね橋とで守られた要塞都市になった。ミルナ川側に少し下ると、往時の雰囲気そのままの城門が残されており、それを潜ってすぐのところにロッジァが残っている。
 石畳の小道を僅かに上がると、村で一番大きい聖マリヤ・ヴィド・モデスト教会(Sveta Marija, Sveti Vid i Modest) 脇に、展望が開けた涼しい木陰のテラスがある。

 直径数百メートルの石畳の編み込まれたような路地が覆う旧市街は、徒歩でしか入れない部分も多い。そんなどの小径を歩いても、一枚の絵画のようだ。
 村で一軒のミニスーパーのレジでは、立て板に水のようなイタリア語の応答が返ってきた。海岸の大きな町に比べ小っぽけなこの村では、まだイタリア語が生きた言葉として使われている。
 今では人口僅か80人になってしまった村には、その魅力に惹かれた音楽家や美術家が多く訪れている。
 ギャラリーやアトリエが数十軒あり、また夏季には音楽学校が開かれコンサートが開催される。