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城壁内の旧市街から望むサンマルコ教会 |
ヴェネチアを模して作られたフヴァールの町に海から接岸してみよう。方形に切り抜かれた港の岸は、特に夏であればレジャーボートでギッシリだ。漁船、アドリア海をレジャー航海する者のヨット、ビーチや観光地へとツーリング客を乗せて運ぶ船が入り乱れて港を埋めている。上陸してまず、奥行きが300メートルはあろうかという長方形の石畳の聖ステパン広場(Trg Sv.Stjepana)のスケールに圧倒される。明らかに本国のサンマルコ広場を意識したものだろう。
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港に面した造兵廠(アーセナル)
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すぐ左手には時計塔を伴ったルネッサンス風の建物が堂々と構えている。これはフヴァールで一番のホテル「パラーツェ(Palace)」で、もともとロッジァであったものを再建したものなので、大きな開口部をもったロビーにその面影を残している。一方海岸沿いのすぐ右手には巨大な工場か倉庫のような建物が見える。これはダルマチア一といわれた造兵廠(軍艦造船所)だ。今ではツーリスト向けのちょっとしたショッピングセンターとなっている。また建物の奥の方は17世紀に作られた小さいながらも本格的な劇場になっている。寄航した旅行客や海軍軍人のレクリエーション施設として作られたものだ。広場の一番奥のポイントには、ダルマチア特有の真っ白な石灰石で作られたルネサンスのスヴェティ・ステパン教会(Sv.Stjepan)があり、その半円を展開したようなユーモラスな切妻の形状は、ダルマチアでよく見かける様式だ。
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典型的なダルマチアの白い石灰石で出来た市街 |
次にロッジァまで戻って、すぐ脇から始まる城壁の中の町へ入ってみよう。城壁内の町は、海岸から始まる急勾配の斜面を登るように作られた坂の町だ。山が押し迫り、神社の参道入口の鳥居を思わせるような陰鬱な城門をくぐっていく。町の中心が港の方に移った今、場内は半ば廃墟に近く、若干のみやげ物店と、風情を生かしたレストラン街がある程度だ。しかし一歩一歩あゆみを進めるに従い、どんどん眺めが開けてくる。かなりの運動の後に、山頂のシュパニオル(panjol)砦に到着する。ここから見るフヴァールの全景は、全ての疲れを吹き飛ばすほどの素晴らしいものだ。真っ青な海を切り刻む眼下の赤い町並みと、遠景のパクレ二諸島(Pakleni otoci)の絶妙のバランスに感動すること間近いない。裏から登る車道もあるのでぜひ訪れてみたい。砦のふもとにある美しいサンマルコ教会は、今は博物館として使われている。
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港から見あげるロッジァとシュプリオ二要塞の夜景
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再び広場に戻り、今度は造兵廠の方にまっすぐな岸壁を南下していこう。この海岸沿いはフヴァールで一番賑やかなプロムナードだ。客待ちする観光船や船上でリゾートを楽しむ人たちのヨット、みやげ物の屋台、アイスクリーム、カフェが並び、そして大型船が岸壁に着いたときの賑わいは大変なものになる。この先の小さな入り江のところにある美しいフランシスコ会修道院までの道のりが、お決まりの散歩コースだ。
イタリアの面影がぎっしり詰まったフヴァールは、美しいビーチに囲まれた人気観光地だ。夏には通りいっぱいのリゾート客の間でイタリア語、ドイツ語が飛び交う。宿の確保も簡単ではないが、リゾートの価値の分かる方にはお勧めしたいダルマチアンリゾートだ。
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