ルック島のほとんどの町は、航海に便利な湾に面した西側に発達したが、このヴルブニクだけは大陸に面した東側の海に落ちこむ岩山の上に築かれた、用心深い町だ。
　町に近づく道路から見ると、お椀を伏せたような形の地形の上に赤い瓦屋根がぎっしり敷き詰められ、頂上の教会の鐘楼がアンテナのように突き出ている。それが青い海に浮かんでいるように見え、感動的な出会いとなる。
　町の入口で車を止め、歩行者がようやくすれ違うほどの狭い島内の古びた家々の中へと歩みを進める。ほんの数分で町を突き抜け、町は低い崖となって海に落ち込んでいる。まるで田舎に帰ってきたようなこじんまりした町の雰囲気が、何も無い寒村であるにもかかわらずリゾート客を惹きつける。