彩りも鮮やかな絵画のように美しい町角
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暖色系に統一された、赤、黄、橙で彩られた家並みは、陽光の元でまばゆく、路地の日影でも暗さを感じさせない。
ゆったりとカーブする石畳の坂道に、名産の香水ショップや、香りづけした日用品の店が点在する。
ガイドブックでは、香水の町として紹介されている。
この地域では、ラベンダー、ミモザ、ジャスミン、スミレなど、香水原料となる花の栽培が盛んだ。
香水にちなんだショップが多い
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そのため中世から香水製造が盛んで、フラゴナール、ガリマール、モリナールなど、名だたる香水メーカーの本拠地で、町の傍らには主力工場がある。
ショッピングだけでなく、各社工場の見学や、香水博物館で栽培から製造までの工程の展示があるなど、香水で町おこしといった感じだ。
しかし、この町の魅力は別のところにもある。コートダジュールが、小さな村までリゾート客や観光客であふれているなかで、それほど観光化を受けず、活気と生活感に満ちた市民中心の町として残っているのは、奇跡のようでもある。
町並みに溶け込む、こじんまりしたフラゴナール本店
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山ひだの、複雑な形の丘状のうねりの上に築かれた旧市街は、ローマ時代以来の歴史を持つ。小さな山と谷が入り組んで坂が多く、地形に対応して伸びる道は、ほとんど直線がない。
自分がどこを歩いているか掴みにくいが、旧市街は一回り20〜30分程度のサイズなので、自由に歩き回るのが面白いだろう。
駐車場やバスターミナルに近い、小さなパッティ広場(Place du Patti)から旧市街に足を踏み入れてみた。緩く波打ちながら下っていく、細いロラトリ通り(Rue de l'Oratorie)を進んでいくと、右手のアーチの向こうが賑やかそうな感じなので、曲がってみる。
その先には極端に細長いエール広場(Place aux Aires)があり、生鮮食品から日用品、花屋、カフェなど、市民生活に欠かせない市場の役目を果たしている。買物をする市民で賑やかというより騒がしい感じすらする、活気ある場所だ。
旧市街の市民生活の中心、細長いエール広場の一角
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広場の先を下っていくと、向こうの丘との間の谷に沿ったジャン・オッソーラ通り(Rue Jean Ossola)に突き当たる。この谷間の道は、途中で名前を変えながら町の中心を通過しており、香水や土産物の洒落たショップが点在する、観光客にとってのメインストリートだ。
先の突き当りのT字路に、フラゴナールの本店がある。拍子抜けするほどこじんまりした普通の店舗ほどの大きさだが、石畳の市街によく溶け込んでいる。
丘を覆うように複雑に広がる旧市街
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ジャン・オッソーラ通りを左に進み、名前がマルセル・ジュルネ通り(Rue Marcel Journet)と変わるころ、右手が開けた感じになる。行ってみると大きな広場と教会がある。ノートルダム・ド・ピュイ大聖堂だ。脇のテラスからは、町の下に広がる大地と、背後に控える山地の展望台だ。足元には香水工場も見えている。
路地を歩いているときは気づかなかった、日差しを受けた町並みの明るい色合いが印象的だ。
グラースに来る観光客は香水が目的なので、ショップや工場を見たあと真直ぐ他へ行ってしまうためか、宿やレストランは一般的なレベルのものしかない。
カブリ(Cabris)、ムージャン(Mougins)、ヴァルボンヌ(Valbonne)など、郊外の静かな村には味わいのある宿が多いので、日帰りのエクスカーションが向いているかもしれない。
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