隣 りのガッサンと並んで、サン・トロペ湾の奥の山上の、もう一つの村がラマチュエルだ。
この二つの村の印象は、対照的だ。ガッサンが直線的で灰黒色の石の村であるのに対し、ラマチュエルは曲線的で明るい花と緑の印象だ。
村の道は、まるでとぐろを巻いたような形をしており、旧市街の外周を反時計回りに緩く登って行く。丘の頂上に向かって高い家の壁に、色とりどりの花が咲き競う。
半島にある村からは、どの方角を眺めても、海の青さが目に飛び込む。その眺めを楽しみながら田舎料理を楽しめる、テラスレストランが連なっている。
半周回って登りきると、車道の最高地点である教会前の小広場に出る。今日は市の日、広場は日用品を売る露店でいっぱいだ。旧市街の居住者だけでなく、近くの住人も車で買出しに来ているから、都会並みの混雑だ。
旧市街は、円形に軒を連ねる建物自体が、敵の侵入を防ぐ要塞の城壁に様になっており、広場の一角の門をくぐると、その中に入ることができる。
旧市街の内部は、歩行者のための円形の通路があり、さらにその内部を短絡する数本の路地がある。
狭い空間なのに、折れ曲がる道、立体的に造形された建物、暖色系の壁色と、その間を埋める数々の花や緑のため、圧迫感を全く感じない。
直径100メートルにも満たない旧市街の迷路は、一巡りわずか数分間だが、楽しい思い出になる。
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