崖に貼り付く家々を、網目状に歩道が繋ぐ
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夕陽のスポットとして有名だったイア。
その素晴らしさは疑うまでもないが、今世紀に入り高級リゾートとしての位置付けを強めつつある。
エーゲ海一のリゾートになったサントリーニ島は、ユーロ導入後ますます開発が進み、島のもう一つの町フィラ(ティラ)は、繁華街のような賑々しい観光地になってしまった。
崖沿いに点在するトラディショナル(伝統的な民家風)ホテル
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だから優雅な休日を過ごしたいなら、イアを選びたい。
三日月形をしたサントリー二島は、西海岸が200〜300メートルの崖という天然の要塞になった珍しい地形で、その縁からこぼれ落ちそうに町並が広がっている。
島の西端に位置するイアは、その崖の上から余すことなくエーゲ海に沈む夕陽を見ることができる、またとないスポットとして知られてきた。
西海岸は見る限り崖が続く
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町の入口は、あまりにも平凡だ。市街地の入口で車はシャットアウトされ、歩いてメインストリートを進んでいく。
しかしすぐに特異な地形に気がつくことになる。町の中心に近づくにつれ、左側の建物が寂しくなってくる。左斜面の傾斜がますます激しくなり、覗き込むとはるか下の海まで恐ろしい角度でなだれ込んでいる。
しかもその斜面に張り付くように建物が覆っているのだ。急傾斜を斜めに横切るようにつづら折の石段のネットワークが、家々を繋いでいる。
絶景を背景にしたお洒落なショップ
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よくこんな危険なところにと思うが、地震地帯にあるこの町は、実際1956年の大地震で大きく被害を受け衰退した。しかし最近の観光開発で、崖沿いの廃墟や空き地が次々と高級リゾートホテルにリニューアルされている。
その多くが、横穴式住居だった蒲鉾形の古い民家の形を再現しており、異次元世界のようなユニークな景観を作り出している。これらは、トラディショナルホテルとして予約困難なほど人気を集めている。
はるか下の港まで続くつづら折の階段
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これらのホテルでは、自然災害の恐ろしさを上回るほどの、夢のような素晴らしいリゾートライフが待ち受けている。
この崖の道沿いに並ぶ洒落たショップやカフェが、真っ青な海によく映える。右手の緩やかな斜面にはいかにもギリシアらしい地元民の町並みで、その対比が面白い。
やがて眼下に港が見えてくる。フィラの町と同じく、港から町までは、果てしない石段を歩いて登ることになる。荷物がロバで運ばれていくのも同じだ。
岬の先端は目に入るもの全てが海!
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岬の先端近くは、同じ崖の斜面でも夕陽を正面に迎える最高の場所だ。この一帯にはホテルが少なく、「private」の看板が目立つようになる。全て個人所有の別荘なのだ。
夕陽を眺める人々は、数少ないカフェのテラスから、そして歩道の上から、鈴なりになって眺めることになるので、余裕があれば早めに行って場所を確保しておきたい。
エーゲ海を赤く染めながら沈む夕陽
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雲ひとつない、ほのかに赤く染まるエーゲ海に、日はやがて沈んでいく。その感動を独り占めにするではなしに、集まった数百人の人たちと共有する一大イベントだ。
日の沈んだカフェのオープンテラスで、その余韻を楽しんでいたい。
--> Ia(地中海生活 −What's地中海 Resort Life "Ia" より)
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