小 さな岬がサルデーニャ島の北海岸にある。岬はちょっとした岩山になっており、くびれた平坦部で繋がっている。その上に覆い被さる町がカステルサルドだ。特にサンタテレーザ・ガッルーラから向かうときの感動が素晴らしい。小さな岬を回りこむと、計算されたかような構図で町の全景が突然目に飛びこんでくる。
この町はかつて、カステルアラゴネーゼと呼ばれていた。岩山の頂上にはアラゴンの城がある。中世に地域の中心都市であった面影はないが、その町の美しさは、今でも島一番だ。
城を中心に家々が斜面を埋め尽くし、港まで広がる。興味を引かれるのは、やはり旧市街だ。山頂の城を目指す道は複雑でまるで迷路のようだ。路地をふと曲がると、軒先に座っている老人に呼び止められた。この町の名産の手工芸品の何かを編んでいるようだった。閑静な旧市街に点在する、自分で編んだ籠を売る小さな店、陶器やチーズ、菓子等の土地の品物を売る店を覗くのも楽しい。
岬の先端側には、16世紀のカテドラルがある。マジョルカ焼き風のクーポラが青い海に映えて美しい。すぐ上の斜面の狭い敷地にきゅうきゅうとして建っているサンタ・マリア・デッレ・グラッツィエもファザードがない簡単な作りで、面白い。
細い路地を上り詰めると頂上のカステロ(城)に出る。今は博物館になっているが、かつてはここから敵船の襲撃を見張っていたのであろう、240度が海に囲まれたその眺望は見事であり、テラスから眺める海の蒼さは何にも例え難いものだ。眼下に西の入江のビーチが広がり、カテドラルの緑と黄色を交互に配した鐘楼のクーポラが海に映えて美しい。
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