古 代ローマ時代の街道はサルデーニャ西部の険しい海岸を避け、内陸の丘陵部を通っていた。その街道沿いの町の一つがフォルドンジャヌスだ。台地に刻まれた狭い渓谷の中にある、見落としてしまいそうな小さな町だ。
しかし、古い歴史に加えてこの町を有名にしているのは温泉だ。ローマ時代から温泉地として知られており、マーレウ川沿いにまるで日本の大旅館を思わせるような大規模な温泉施設の遺跡があり、驚かされる。およそ2000年の時を経て、屋根は落ち、壁を彩っていたであろう壁画の痕跡は微かになっているものの、一番大きな石作りの浴槽は、温泉旅館の大浴場ほどの大きさで、今でも吐出口から約50℃の湯が勢い良く沸き出ている。脇にある2〜3人が入れそうな小さな浴槽には適温の湯がなみなみと張られている。
現在遺跡での入浴は出来ないが、源泉から流れ出る豊富な湯は、古代の浴槽からあふれてフェンスの外へと流れ出ており、そこに設置された温泉を地元の主婦が洗濯などに利用している[写真左下]。入浴したければ、300mほど先の木陰にある共同浴場のような建物が利用できる[写真右下]。個室がいくつか並んでいて、事務所で鍵を借りて利用する。イタリアの温泉は高級療養施設としてホテルに組みこまれているものが多いが、このように気軽に利用できる温泉は貴重だ。
町は地区教会を中心にコンパクトにまとまった典型的な南サルデーニャの町だが、アラゴン時代の屋敷カーサ・アラゴネーゼでは当時の生活の一端を垣間見ることができる。
|