"地中海,イタリア,ジェノヴァ,ジェノバ,genova"
「中世のロンドン」とでも呼びたい、かつての金融都市
Genova
ジェノヴァ
(イタリア)♦

大海洋都市国家として中世の一時代を築いたジェノヴァ。そのせいか港町のイメージが強いが、訪れてみてその印象は一変するだろう。
 確かに港町ではあるのだが、むしろ海路を利用した物流センターとしての合理的で機能的な港湾都市であり、旅情を漂わせるようなものではない。
 歴史的にも、地中海航路という中世の高速道路を使って、東地中海から黒海にかけてプランテーションを建設し、利益を吸い上げることで発展してきた。まさに、現代の企業の海外進出を、数百年前にすでに行っていたわけだ。


 港の一帯は、サン・ジョルジョ館や王宮を始めとする歴史的な建物が、最近できた水族館、ビーゴ(展望塔)などの観光施設や倉庫群などの新しい建造物に混じって、今なお16世紀に絶頂を迎えた往時の繁栄を、強くアピールする。[上の二枚の写真は大聖堂]
 当時のジェノヴァは、スペインと組んで、アメリカ大陸から莫大な富を得ており、まさにヨーロッパ経済の中心にあった。
 ジェノヴァの最盛期に山裾に新しく建設された、ガリバルディ通りに立ち並ぶ数々の貴族の館もまた、負けじと華麗な姿を留めている[下の写真]。


 しかしその様子は、まるで雑居ビル街のようであり、およそイタリアの芸術的で優美なイメージとは、かけ離れている。
 いかにも、利益や実用を重視したジェノヴァらしい光景ともいえるだろう。
 真髄は、建物の外装に表れている。外壁の装飾や、場合によっては窓までもが本物ではない。何もない単なる外壁の平面上に、陰影をつけて見事に立体的にペイントされた「絵」で済ましている[右の写真]。この風習は、州内の小さな町でも見られる、リグリアで特徴的なものだ。

 港とガリバルディ通りの間の雑然とした一帯が、中世の繁栄の面影を残す旧市街だ。まさに、ロンドン、もしくは丸の内のような、ビジネス都市の顔といった感がある。
 直線的に網の目のように作られた細い道に沿って、背の高い中世の家屋が整然と立ち並ぶ。
 今は住居や商店・食堂などに使われており、古くからの繁華街だ。今でもおいしい食堂や菓子屋、最新ファッションを求めて市民が集まる地区だ。


 その隣には、宮殿(旧共和国の総督邸)、大聖堂などがある、権威の中心となるフェッラーリ広場、さらに現在の市の中心へ向ってアーケード街となって賑わう9月20日通りがまっすぐ伸びている[左上の写真]。
 フェッラーリ広場からは、「コロンブスの生家」と呼ばれ誰もが立ち寄る観光地となっている小さな家も近い[右上の写真]。その脇のサン・タンドレア門(ソプラーノ門)と共に立ち寄ってみると良い。2本の高い塔を門柱としており、その上は市街を眺めるのにちょうど良い展望台になっている。

 ジェノヴァは山が迫る狭い土地に開かれた大都市なので、膨張した市街地は海岸に沿って細長く延びている。それでも収まらず、一部の市街は山の斜面の上まで続いている。
 だから市民の足として、ケーブルカーやエレベーターが活躍している。時間があればリーギ(Righi)行きの路線に乗り、港を一望する山上の景色を楽しみたい。
 ガルバルディ通りの裏手のポルテッロ広場(Piazza del Portello)のエレベーター乗り場からモンタルド展望台(Belvedere Montaldo)に上っただけでも、港と旧市街一帯が手に取るように見渡せる[上の写真、ジェノヴァ港の象徴、ランテルナが見える]。