大海洋都市国家として中世の一時代を築いたジェノヴァ。そのせいか港町のイメージが強いが、訪れてみてその印象は一変するだろう。 確かに港町ではあるのだが、むしろ海路を利用した物流センターとしての合理的で機能的な港湾都市であり、旅情を漂わせるようなものではない。 歴史的にも、地中海航路という中世の高速道路を使って、東地中海から黒海にかけてプランテーションを建設し、利益を吸い上げることで発展してきた。まさに、現代の企業の海外進出を、数百年前にすでに行っていたわけだ。
しかしその様子は、まるで雑居ビル街のようであり、およそイタリアの芸術的で優美なイメージとは、かけ離れている。 いかにも、利益や実用を重視したジェノヴァらしい光景ともいえるだろう。 真髄は、建物の外装に表れている。外壁の装飾や、場合によっては窓までもが本物ではない。何もない単なる外壁の平面上に、陰影をつけて見事に立体的にペイントされた「絵」で済ましている[右の写真]。この風習は、州内の小さな町でも見られる、リグリアで特徴的なものだ。