小さな公園から眺める造形美
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バランスのとれた魅力、とこの村を表現したい。特徴がなくつまらないという意味ではない。全ての良さが、大きすぎず小さすぎない町の規模と相まって、これぞチンクエ・テッレという完璧な村を作り上げている、ということだ。
段々畑に張り付いたような村の全景(船上より)
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小さな谷を埋め尽くすように可愛い家が密集し、その一部は溢れて谷の南側の山の上にまで達し、断崖となって海に接している。反対側の山の傾斜地は緑一色のブドウの段々畑だ。
狭い港から延びる一本道には、海から引き上げた漁船が置かれ、押し寄せる観光客の並みの中に微かに漁師町の風情を漂わす。港近くのうまい魚を出す食堂も魅力的だ。
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魚のおいしい気取らない食堂が多い─写真はピッコラ・マリーナ
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町へ入る3つのアクセスは、それぞれ違った場所に到着するので、中心部への道筋が分かりにくいかもしれない。
港から山へ上がる一本道がメインストリートになっており、船で到着した場合は大変分かりやすい。狭い港の海に向かって左の先端近くが乗船場になっている。
鉄道駅は山向こうにあり、村まで短いトンネルが通じている。車両通行禁止のため歩行者だけが通行でき、ほんの2〜3分でメインストリートの途中に出る。ちなみに線路は村の真ん中を谷を横切るように通過している。邪魔にならないようコンクリートで覆われており、メインストリートにある不自然な段差がそれだ。恐らく谷が狭すぎて、駅を作るには長さが不足していたのだろう。
自動車の場合、国立公園の手前で行き止まりになる国道が、村の上部まで通じており、そこから村へ下ってくる。一般車の乗り入れはできないので、村はずれの有料駐車場に止めるのだが、日中は混んでいるので場合によっては入れない覚悟が必要だ。駐車場から国立公園の連絡バスでメインストリートの上部、地区教会からひと下りしたあたりまで入ることができる。そこは山の上の村(ヴォラステラ、グルッポ)に上がるバスの乗り場にもなっている。
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本来、船の上げ下ろし用の道であったメインストリート
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海に向かって港の右手は公園になっていて、岩山の上に盛り上がる素晴らしい村の造形美が楽しめる。港の周辺には幾つかのレストランがあるが、港正面にテラスを持つピッコラ・マリーナ(Piccola Marina)が安くて旨いので人気がある(夏のテラス席は予約必須)。ここは安ホテルも兼業しており、食堂といった感じの気取らぬ味とサービスが、この村によく似合う。
谷沿いのメインストリートの両側は店やがならび、その上の斜面には村人の住居の他、多くがアパートとして貸し出されている。リゾートによくある数日〜1週間単位の貸し出しが基本だが、季節により短期貸出が可能なところもあるようなので、ホテルの少ないこの村に滞在する場合の選択肢に入れておきたい。
夕方、人並みが引くと、漁師町の風情が漂う
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また先の港近くの公園から中腹まで上りブドウ畑の中をいく散歩道がある。ここからの海と町の眺めも美しい。
この道は、町の上部のテラス状の場所にある14世紀のサン・ロレンツォ教会で、上ってくるメインストリートと合流するので、逆コースの方が見つけやすいかもしれない。そのテラスから眺める、夕日に金色に反射する町の美しさもまた、目に焼きつき忘れられない。
この教会から谷を見下ろして左側の斜面に入り組む、いろいろな小道を歩くのも楽しい。次々と角度を変える村の眺めや、隠れ家的なレストラン、そして尾根上からはリオマッジョーレへまでの海岸線が一望できる。
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村の後背地はブドウの段々畑になっている
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マナローラは、山の上の村に行くのも都合がよく、ヴォラストラまでは国立公園の連絡バスが1〜2時間ごとに出ている。
ハイキングコースの起点として便利で、また車での旅行や、マナローラで宿が確保できなかった場合の宿泊にも利用できる。
鄙びた小集落グルッポには、予約なしでは席が取れないカップン・マーグル・イン・カーサ・ディ・マリン(Cappun Magru in Casa di Marin)がある。
上下方向に複雑に重なる構造の村の建物
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ハイキングコースで有名なのは、No.2と呼ばれるリオマッジョーレからモンテロッソまでの海岸近くを通る長いコースだが、特にマナローラ〜リオマッジョーレはヴィア・デッラモーレ(愛の小道)と呼ばれている。片道20分くらいで歩けるので、ぜひ行ってみたい(改札があるので、事務所で事前に国立公園の利用券=チンクエ・テッレカードを買っておく必要がある)。
No.2は全体としてはアップダウンの激しい登山道と考えたほうがよいが、この区間だけは断崖下をくり貫くように平坦に整備され、絶景を楽しむ遊歩道になっている。途中の眺めのよいバールで一息入れるのも良い。
この村をベースにできれば数日間滞在して、チンクエ・テッレの自然を堪能したい。
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