ォトジェニックな美しさなら、チンクエ・テッレの全ての要素が凝縮されたヴェルナッツァではないか。全ての村を回れない場合でも、ここだけは外したくない。
　急傾斜の山地が迫る入り組んだ狭い谷間に暖色の家々が密集し、海に突き出す小さな岩の岬には、中世にリグリアを領地としたドリア家の古城がアクセントを添える。その奥の僅かな入江を風格あるサンタ・マルゲリータ・ダンティオキア教会が見下ろし、谷間には漁船を上げ下げする通路が、観光客向けの店が並ぶプロムナードとして谷の奥の鉄道駅まで伸びている。

　どこを取っても絵になる町の美しさを堪能するには、くまなく歩き回るのが良い。急斜面ばかりで大変だが、ひと登りするだけで複雑な地形のため思わぬ景色が展開する。
　できれば、ほんの数分でも、海岸沿いの遊歩道に足を踏み入れてみたい。全域が国立公園となっているためハイキングコースに一歩でも立ち入るには、町外れのゲートで入場料（５ユーロ）が必要があるが、一面の青い海を感じながらブドウの段々畑を縫って歩く体験には変えられない。

　観光客の人混みを掻き分けながら町の先端部のドリアの城にたどり着き、迷路のような狭い通路を抜けて塔に登るのも、楽しいアトラクションの一つだ。

　町へのアクセスは、各一時間毎の船とローカル列車だけになる。車で訪れる場合、センターラインのない地方道が通じているが、町外れの駐車場が満車になる日中は実質的に難しい。