ートダジュールの美しい海岸線の一部を切り取るように、モナコ公国という小さな国がある。
しかし地方の一小国が現在の繁栄を手に入れるまでには、奇跡のような物語の連続があった。 ジェノヴァの名家グリマルディ家は、政争に敗れて国を追われ、ジェノヴァ共和国の西隣の急峻な海岸線にモナコ公国を建国した。 最大時の領土は、エズからマントンまで約15kmの幅に及ぶものだったが、しばしば大国の干渉を受けながらも、したたかに国を維持し続けた。
外交の自由度が高まり、翌年ようやく日本との国交が樹立した(2006年12月)。
国境管理、関税はフランスが握っているため、検問無しで気がつかないうちにモナコに到着する。 交通機関はフランス国鉄またはフランスのバス会社の利用となり、街中ではモナコ語は忘れ去られてフランス語が巾を利かせている。
だから、宿泊、食事など物価が高いモナコを訪れるには、むしろフランスからの日帰りが何かと都合よい。 ニースやマントンから電車で数駅で到着乗るのも良く、またモナコ市と繋がった一つの街の中を国境線により分けられているフランス側のボーソレイユ(Beausoleil)市から歩いて行くのも方法だ。
国土が狭いため、駅や線路の土地も惜しいのだろう、最近フランス国鉄はモナコ国内を全てトンネル内で通過する新線を建設した。 唯一の鉄道駅は、もちろん地下駅だ。ホームのニース寄りから海側方向の出口へ向う、数百メートルの地下通路を抜けると、旧市街(宮殿)がある高台への登り口近くに出る。
要塞のように海に延びる大地から、マリーナの向こうに広がるモンテカルロの高層マンション群、また新たに埋め立てて開発したフォンヴィエイユの住宅群が陽光に輝いている。 宮殿はそそり立つ岩山を背景に、威厳十分に訪問客を迎えてくれる。正午を挟んで行われる、フランス人衛兵の仰々しい交代式が面白い。 パレ広場から奥の小さな旧市街は、国内で唯一昔の面影を残している地域だ。 細い路地の両脇は地中海らしい明るい色でペイントされた土産物屋やレストランが連なり、観光客で賑わっている。 その傍らで海を臨んで立つ大聖堂では、死後今も人気が高いグレース王妃への献花やキャンドルの灯りが絶えない。
地中海の美しさを堪能したいなら、熱帯庭園がお勧めだ。 宮殿側の駅出口から公共エレベーターと急な階段を繋いで行くこともできるが、体力的にハードである上、分かりにくい(到達不可能に近い?)。旧市街から熱帯公園行きの路線バスに乗るのが一番だ。 公園はものすごい急傾斜の中に有り、まさにモナコ中を手に取るように望む素晴らしい場所だ。
これ以上の眺めがお望みであれば、フランス領内の山上の村ラ・トゥルビに行くと良い。 標高約500メートルの街周辺の道路から、モナコを見下ろす素晴らしい展望が得られる。
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