"地中海,モナコ,monaco"
リゾートに賭けた小国モナコ
Monaco
モナコ
(モナコ)♦
Centro
Storico

山の上(仏領内ラ・トゥルビ付近)から見下ろすモナコ旧市街

ートダジュールの美しい海岸線の一部を切り取るように、モナコ公国という小さな国がある。
 面積はわずか1.95km2(皇居の1.37倍)、純粋な国民は約5000人(外国人居住者を除く)というミニ国家である。
 行政やインフラの多くをフランスに頼っており、地中海リゾートとして観光客、長期滞在者(無税なので高額所得者に人気がある)を受け入れることで、成り立っている。
 歴史あるカジノ、街頭でのF1グランプリ開催、一時期タブロイド紙を賑わした王室、そして高級ホテル・レストランなど、この100年の間に、一流リゾートとしての地位を確かなものにしてきた。


岩山に組み込まれたように作られた都市


 しかし地方の一小国が現在の繁栄を手に入れるまでには、奇跡のような物語の連続があった。
 ジェノヴァの名家グリマルディ家は、政争に敗れて国を追われ、ジェノヴァ共和国の西隣の急峻な海岸線にモナコ公国を建国した。
 最大時の領土は、エズからマントンまで約15kmの幅に及ぶものだったが、しばしば大国の干渉を受けながらも、したたかに国を維持し続けた。

宮殿前のパレ広場からモンテカルロ方面を望む

 1861年、フランスに領土の大部分とを差し出し、かつ国家主権を制限された保護国同然の条件下で、当面の存続が約束された。永続的な国の存続が保証されるには、2005年のフランス・モナコ友好協力条約締結を待たなければならなかった。
 外交の自由度が高まり、翌年ようやく日本との国交が樹立した(2006年12月)。

山を背景にした威厳ある宮殿

 モナコを訪れると、フランスの存在の大きさが改めて感じられる。
 国境管理、関税はフランスが握っているため、検問無しで気がつかないうちにモナコに到着する。
 交通機関はフランス国鉄またはフランスのバス会社の利用となり、街中ではモナコ語は忘れ去られてフランス語が巾を利かせている。

正午を挟んで行われる衛兵交代の儀式

 モナコ語の国名「ムネグ(Munegu)」の表現にも、ほとんどお目にかからないほどだ。
 だから、宿泊、食事など物価が高いモナコを訪れるには、むしろフランスからの日帰りが何かと都合よい。
 ニースやマントンから電車で数駅で到着乗るのも良く、またモナコ市と繋がった一つの街の中を国境線により分けられているフランス側のボーソレイユ(Beausoleil)市から歩いて行くのも方法だ。

旧市街はモナコの歴史を語る貴重な場所

 モナコは、山の傾斜地に作られており、街には急傾斜の坂が多い。だから、観光なら市内バスや公共エレベーターをうまく使いながらの、回り方が大事になってくる。
 国土が狭いため、駅や線路の土地も惜しいのだろう、最近フランス国鉄はモナコ国内を全てトンネル内で通過する新線を建設した。
 唯一の鉄道駅は、もちろん地下駅だ。ホームのニース寄りから海側方向の出口へ向う、数百メートルの地下通路を抜けると、旧市街(宮殿)がある高台への登り口近くに出る。

レストランや土産物屋が軒を連ねる旧市街の路地

  数分の登りで、パレ広場と呼ばれる宮殿前テラスの素晴らしい展望に出会う。
 要塞のように海に延びる大地から、マリーナの向こうに広がるモンテカルロの高層マンション群、また新たに埋め立てて開発したフォンヴィエイユの住宅群が陽光に輝いている。
 宮殿はそそり立つ岩山を背景に、威厳十分に訪問客を迎えてくれる。正午を挟んで行われる、フランス人衛兵の仰々しい交代式が面白い。
 パレ広場から奥の小さな旧市街は、国内で唯一昔の面影を残している地域だ。
 細い路地の両脇は地中海らしい明るい色でペイントされた土産物屋やレストランが連なり、観光客で賑わっている。
 その傍らで海を臨んで立つ大聖堂では、死後今も人気が高いグレース王妃への献花やキャンドルの灯りが絶えない。

熱帯庭園から眺める旧市街は、海に浮かぶ要塞のよう

 国内には、カジノ、ショッピング、ホテル、レストラン、博物館など、楽しむための場所には事欠かないので、あとはそれぞれ興味のあるところを巡ってみると良い。

 地中海の美しさを堪能したいなら、熱帯庭園がお勧めだ。
 宮殿側の駅出口から公共エレベーターと急な階段を繋いで行くこともできるが、体力的にハードである上、分かりにくい(到達不可能に近い?)。旧市街から熱帯公園行きの路線バスに乗るのが一番だ。
 公園はものすごい急傾斜の中に有り、まさにモナコ中を手に取るように望む素晴らしい場所だ。

トゥルビ近くの国道から見たモナコ全景


 これ以上の眺めがお望みであれば、フランス領内の山上の村ラ・トゥルビに行くと良い。
 標高約500メートルの街周辺の道路から、モナコを見下ろす素晴らしい展望が得られる。