フ山地が海に迫るモロッコの地中海沿岸は、アラブ人主体の平野部とは違いベルベル人が住む特別な地域だ。
地中海への玄関口である貿易都市として発展したテトゥアンだが、19世紀に入ると列強諸国の圧力が強まり、ついに1860年、リフ地域へスペイン軍が進入した。 テトゥアンは、フェズ条約による国際的承認を経て1956年まで1世紀続く旧スペイン領モロッコ(現モロッコの地中海沿岸からリフ山地までを領域とする保護国)の首都となり、スペイン、アラブ、ベルベルの3民族が共存する、特徴ある都市を形成したのである。
在新市街の中心、バクトゥリア教会(lglesia de Bacturia)が建つムーライ・エル・メフディ広場(Place Moulay el-Mehdi)を出発し、スペイン風の建築が左右に並ぶモハメッド5世通りを進むと、城壁に囲まれた旧市街の入口にあたる、露天が出て賑やかなハサン2世広場(Place Hassan II)に行き着く。
王宮脇の立派なエル・ルアー門(Bab er-Rouah)をくぐると、いよいよ旧市街に入る。
ークは、業種別に商店が固まっている本来の姿を良く残しており、多少は現在位置の把握のヒントになる。しかし方向感覚のない人がこの地区に入り込むのは考えたほうが良いだろう。広場でガイドを見つけた方が、間違いない。
路地の風景は、アラブ人の町とどこか違って、彼らの故郷アンダルシアの雰囲気を感じさせる。 道をうまく取ると、中心部の大モスク、またさらに高台のカスバに抜けることができる。
テトゥアンは、しばしばスペインとモロッコの混血都市として紹介される。確かに新市街の外観や都市計画にスペインの影響を色濃く残しているが、街の雰囲気はアラブ─ベルベル一色だ。 マルティル川(Wadi Martil)を11km内陸に入った町への訪問は、地中海沿いに並ぶツーリスト向けのリゾートからの手軽なエクスカーションになるだろう。
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