イ ストラ半島の海岸沿いに点在する、ベネチア共和国領時代の港町。その中でもピランは最も忠実にヴェネチア時代を伝える街だ。小さな岬状の狭い土地の上に開かれた町は、運河の町ヴェネチアと立地が酷似している。狭い路地を覆い被さるように立ち並ぶ建物、その中にぽっかり現れる小広場、そして東方風の建築デザイン。 |
ポ ルトロージュから海岸沿いに車を走らせていくと、左手にピランの小さな全容が見えてくる。ここにゲートがあり、この先の一般車の進入は規制されている。やがて漁港が見えてきて、港の一番奥の部分に面して町の中心タルティーニ広場(Tartinijev Trg)が現れる。この町出身の18世紀の有名なバイオリニスト、ジュセッペ・タルティーニにその名の起源をもつ円形の広場で、真っ白な大理石が敷き詰められており、その周りを取り囲むヴェネチア時代のパラッツォの奥の高台には、聖ユリイ(Sv.Jurij)教会と鐘楼が見える。旧ヴェネチア領内の教会の鐘楼はしばしば首都ヴェネチアのサンマルコ広場の鐘楼を模して作られているがここも例外ではない。鐘楼の上まで上がってみる。真っ青なアドリア海と町のオレンジの屋根、それにタルティーニ広場の白い大理石とのコントラストが美しい。内陸国スロヴェニアの海岸線は大変短く、港越しに見える陸地はもう隣国のクロアチアだ。 |
タ ルティーニ広場に戻り、港から先の海岸沿いにはレストランが続く。漁港で水揚げされる新鮮な魚を目当てに観光客が訪れている。小さな町なのでゆっくり5分も歩くと、もうマドナ岬(Rt Madona)の灯台だ。ここはヴェネチア時代にはプンタ・マドンナと呼ばれていたところで、中世の要塞を兼ねた灯台と聖クレメント教会(Sv. Klement)とがぽつんと立っている。夕日を眺めるには最高のローションで、日が沈む頃には市民も観光客もこの散歩道を続々と岬へと向かっていく。 |
旧 市街の背後には新市街が広がっており、山に向かって坂をあがっていくと突然、かなり保存状態のよい城壁の一部に出くわす。上に登ってみると聖ユリイ教会から灯台までの町の全景、さらにその背後にはかつての首都ヴェネチアの山影が望まれる。ピランを訪れたらぜひこの景色を眺めておきたい。
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