ア ンダルシアの地にあって、3000年の歴史がある美しい港町であり、かつ県庁所在地でもあるカディスは、その重要性の割りに省みられることが少ない。
旅行者にとって、アンダルシアとは即ちアラブの遺産であり、そのアラブの影響が殆ど見られないカディスに興味を示さないのは、残念ではあるが理解できる。
カディスは海に浮かぶ小島のような地形に築かれた、スペインでは珍しい海洋都市で、そのため歴史上の殆どの時代に、重要な港町であった。
有史以来最初にカディスに目をつけたのは紀元前11世紀のフェニキア人で、それはローマ、西ゴートの時代にも変わらなかった。
唯一の例外がアラブ人だった。遊牧民族の彼らは、基本的に海に関心がない。内陸部征服のための輸送機関としての船の単なる発着場所としか考えておらず、町にたいして手を加えさえしなかったらしい。そのためアラブの痕跡は極めて少ない。
しかし1260年頃、町がスペインに奪還されると再び港町として活気を帯びるようになり、特にスペインのアメリカ大陸支配の時代には、大陸への玄関口として大きく発展した。
堤防に囲まれて海上に浮かぶカディス旧市街へは、大陸から伸びる約10kmの砂州を走っていく。一番狭い部分で幅300メートル程しかないが、先端に近づくと埋め立てられて広くなり、新市街となる。
そして砂州の先端部の五角形をした地域が、一周約4kmの意外に大きな旧市街だ。
海沿いを歩くなら、市街の西側、サンタ・カタリナ城から大聖堂までが良い。砂の上から直接立ち上がる岸壁に沿って、黄色いドームを抱く大聖堂までが素晴らしいプロムナードだ[写真上]。途中、海上に建てられたサン・セバスチャン城へ真っ直ぐ伸びる橋があり、海へと向かうロマンティックな一本道となっている[写真中]。城は軍事基地のため入場できないが、途中までなら歩いて行ける。
市街地の主な見所は、中心に位置するタビラの塔の付近に多い。また東寄りの、花の広場[写真下]、ミナ広場などはホテルやレストランが多く賑やかな一帯だ。
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