古 代ローマの都市が地中から甦った。発音記号がつく変則的な地名は、非スペインに由来することが多い。メリダは、ローマ時代の州都エメリタ・アウグスタに由来する。これといった特徴もない草原の中に、2000年以上たった今も、エストレマドゥーラの州都として栄え続けているというのには驚きだ。
メリダは地方中核都市として、首都ローマを模して、円形競技場、劇場、橋、水道橋、神殿、街道などが次々と整備された。それが現在の町の真下から発掘され、今やこの地方都市は世界遺産として有名になっている。
街を歩くと、市街地の中に突然、発掘し補修・再建された神殿や門が現れるのが、修復跡の不自然な新しさを除けば、本家のローマを髣髴とさせる。
修復された円形競技場・劇場・水道橋はいずれも大規模だが、そんな大きな建造物が残っていたわけではなく、わずかに残る未修復部分を見ると瓦礫にしか見えない。それでもかつてこんな内陸の大地の中に、立派な公共物を備えた都市があったのかと思うと、改めてローマの力を感じずに入られない。
遺跡は現代の町の下層のどこにでもある。例えば市街地のあるオフィス用の建物は、工事の際に発掘されたと思われる地下のローマ時代のモザイクが公開されている。いわば、地下1階がローマ時代のモザイクのある空間なのだ。
メリダの古代ローマ博物館は、各地にあるこの種の博物館を上回るもので、歴史に特に興味がなくても十分楽しめる。
最新のモダンで巨大な建物の中には、おびただしい数のガラス・金細工・建材・モザイクなどの展示品があり、ゆったりと見て回ることができる。
数階分をぶち抜いた吹き抜けの壁に展示された巨大な数々のモザイクの美しさと規模とに目を奪われる。
また地下の展示も面白い。二千年前の街道の石畳や、彩色された邸宅の壁面が、発掘されたままの状態で見学できる。
古代ローマの美術に関心があるなら、膨大な展示品に対し、フラッシュを使わないビデオや写真撮影が許可されているので、気に入った作品をカメラに収めるのも自由だ。
現代都市としてのメリダは、川のほとりにあるどこにでもある地方都市のひとつで、アンダルシア的な白い街並みと、中部山岳の食材が入り混じった、境界地域の印象だ。 古代の面影を残すパラドールに泊まり、周辺の森で育ったイベリコ豚を味わいながら、この街を楽しみたい。
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