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地中海の入口を抑える戦略拠点
Ceuta
セウタ
(スペイン領北アフリカ)♦♦
Centro
Storico

大西洋側を守るように建つアフリカ聖母教会とアチョ山

代から地中海の入口を抑える戦略拠点として、紀元前5世紀のカルタゴ人以来、幾多の民族がセウタを通り過ぎていった。
 中世以後では、740年〜1415年の間アラブ人・ベルベル人がセウタを領有したが、その後はポルトガルからスペインへと受け継がれている。
 現在、地続きのモロッコが強く返還要求を行い、時には封鎖して圧力をかけている。
 アフリカ大陸の町だから自分たちのものだというモロッコ側の明快な発想に賛同し、ジブラルタルはスペインへ、セウタはモロッコに帰属させるべきだという議論を見かけるが、2000年以上に及ぶ多様な経緯を無視した雑な議論だ。
 しかしモロッコ側の、都市としての基盤を築いたのは我々だという自負、そしてかつてのイベリア半島支配の拠点であった栄光の象徴としての意義にも大きなものがある。
 いずれにせよ、ジブラルタルとは全く異なり、元々帰属が流転している土地だけに、ことは単純ではない。


アフリカ大陸から切り離して市街を守る堀と王の砦


 セウタへは、スペイン南端の港町アルヘシラスからフェリーで渡るのが一般的だ。
 セウタへの渡航は出入国には当たらないが、海外自治領で税体系が異なることによる関税検査と、治安上の必要からパスポートチェックを要求される。
 貨物港を兼ねたセウタの港は広大で、その一角にあるフェリーターミナルから市街地までは、タクシーに乗るには近い中途半端な距離だが、人気のない寂しい埠頭を十数分歩いていくのは不安かもしれない。

オレンジの木が南国を感じさせる大聖堂

 セウタ市街は、幅わずか200メートル余りの半島がくびれた部分を中心に広がっている。
 アフリカ側は新しい住宅地、そして陸地が狭くなった部分は堀で大陸から分断され、3本の橋が旧市街へと繋いでいる。旧市街側は海に面し「王の砦」と呼ばれるポルトガル領時代の要塞になっており、その要塞に組み込むまれるようにセウタ一番のホテルであるパラドールがある。
 パラドールの向こうはアフリカ広場(Plaza de Africa)で、この周囲に市庁舎、大聖堂、アフリカ聖母教会などの主要な建造物が集まっている。
 北側の大西洋側の海岸には、マリーナ、プールなどの人工的な施設が並び、公園のように整備されている。
 賑やかな繁華街はないが、ロス・レイエス広場(Plaza de los Reyes)に向けて、店やレストランが点在している。
 一方南の海岸は豊かな自然が残り、穏やかな地中海は、最近ビーチリゾートとしても人気が出始めている。



町を離れアチョ山に向かうと、アフリカとは思えない自然に恵まれた風景

内を一巡りしたら、地中海の入口に当たる門柱、即ち「ヘラクレスの柱」として知られるアチョ山(Monte Hacho)に行ってみるのも良いだろう(モロッコのムサ山との説もある)。
 市街地を抜けると、道はアフリカのイメージとは違う緑豊かな自然の中を走るようになり、岬の近くで方向転換してアチョ山を回り込んでいく。


サン・アントニオ展望台からセウタ市街とモロッコを見晴らす

 現在、アチョ山はスペイン軍基地になっており立ち入ることはできないが、山頂に近いサン・アントニオ展望台(Mirador de San Antonio)からは、セウタ市街とモロッコへ続く山々の見事な造形美を楽しむことができる。
 ところで町を歩いていると、モロッコ系の市民がかなり多いことに気づくだろう。コスモポリタン都市のセウタには、モスク、シナゴーグがあり、山一つ向こうの国境近くには、ムスリムが住むバリオ・デル・プリンチペ・アルフォンソ(Barrio del Príncipe Alfonso)という街区がある。

セウタ─モロッコ国境


 有料道路の料金所のようにも見える国境を越えるとすぐ、モロッコの町アル・フィニディク(ﺍﻟﻓﻨﻴﺩﻖ/Fnideq)だ。タクシーと交渉すれば、モロッコの旧スペイン領エル・リフ地方への日帰り観光も簡単にできる。




煌々と照らされた夜のアフリカ広場

の帳が訪れると、繁華街を持たない街は、人影も疎らですっかり静まり返る。
 対照的に、アフリカ広場は大聖堂が美しくライトアップされ、昼とは違った輝きを放つ。
 さらには、砦から海岸までが明るくオレンジに照らされて、まるで何かのイヴェントが始まるかのようだ。
 その理由を確認したわけではないが、最近モロッコからの不法侵入者が後を絶たないという。
 進入を防ぐために、中世の堀で隔てられ陸地が一番狭くなるアフリカ広場の部分を防衛線として、 警戒しているのではなかろうか。

サン・フランシスコ教会の壁面は、水と光のハーモニーが美しい


 旧市街の中ほどにある、ロス・レイエス広場(Plaza de los Reyes)にある、サン・フランシスコ教会のアラブ風の装飾を取り入れた壁面は、昼間は白と青のコントラストが、夜には水と光のハーモニーが美しい。