代的な首都の中に奇跡のように遺された中世のメディナ、チュニス(トゥーニスと発音されるが、ここでは以下チュニスと表記)はそんな街だ。チュニジアの首都チュニスは、アラブの国というイメージからは想像できないほどの都会だ。地下鉄、郊外を結ぶ通勤路線、高速道路、渋滞、そして通りにはプロムナード、商店、カフェなど、都会的なものが溢れている。港とメディナ(旧市街)を結ぶメインストリートのアビブ・ブルギバ通りは、フランス領時代の壮麗な雰囲気だ。
路地に入ると世界が一変する。両側に所狭しと建ち並ぶ商店、すれ違うのもやっとの人ごみ、方向感覚を失ってしまう曲がりくねり、分岐する路地。ラッシュアワーの駅の乗り換えのような、人いきれと複雑に道が入り組むメディナでは、地図は役に立たない。
差しを避けて、メディナの細い道は屋根代わりのシートが被せてあったり、完全に路地の上に屋根が覆っているところも多い。日本の市場、神社の参道などにも通じる、懐かしい雰囲気だ。雰囲気は人波に乗って奥へ奥へと進むと、塀に囲まれた大きな建物に突き当たる。入口が閉じていれば何かの大邸宅のようにも見えるここが、メディナの中心に位置する大モスクだ。午前中の観光タイムであれば、非イスラム教徒でも中に入ることができる。
大モスクの近くには高価な品、外れの居住地区には生活関連など、それぞれが機能的に配置されている。特に食品や生活用品の地域に入ったら、その人ごみは想像を絶するほどだ。前に進むことも後ろに下がることもできず、どちらに進んでいるのか見当がつかなくなる。そんな中をチャイを売る少年や、路地の真中に屋台を止めて商売する物売りが、さらに混乱に拍車をかける。
チュニスのスークは長径約1.2km、短径約0.8kmの卵型をしている。本来簡単に歩ける大きさなのだが、その複雑さ、その人混みは、半端なものではない。できれば、数時間かけてゆっくり見て回りたい。
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