"地中海,チュニジア,チュニス,トゥーニス,tunis"
昔日の姿をそのまま残すメディナ(旧市街)
Tunis
ﺗﻮﻧﺲ
チュニス(トゥーニス)
(チュニジア)♦
Centro
Storico

旧市街の中心に位置するグラン・モスク

代的な首都の中に奇跡のように遺された中世のメディナ、チュニス(トゥーニスと発音されるが、ここでは以下チュニスと表記)はそんな街だ。チュニジアの首都チュニスは、アラブの国というイメージからは想像できないほどの都会だ。地下鉄、郊外を結ぶ通勤路線、高速道路、渋滞、そして通りにはプロムナード、商店、カフェなど、都会的なものが溢れている。港とメディナ(旧市街)を結ぶメインストリートのアビブ・ブルギバ通りは、フランス領時代の壮麗な雰囲気だ。
 カテドラルを過ぎて細くなった通りは、メディナの入口、ビクトワール広場に突き当たる。広場の真中に、かつての入口であったバブ・エル・バール(フランス門)が象徴的に立っている。広場の部分は城壁が取り払われているので、門というより何か記念碑のように見えなくもない。


欧風の明るいプロムナード、アビブ・ブルギバ通り

 広場の先は道らしい道はなく、両手を広げれば道の両側に手が届くのではないかと思ってしまうほど狭い路地が、奥へと何本も伸びている。ここからが世界遺産にも指定されている旧市街だ。
 路地に入ると世界が一変する。両側に所狭しと建ち並ぶ商店、すれ違うのもやっとの人ごみ、方向感覚を失ってしまう曲がりくねり、分岐する路地。ラッシュアワーの駅の乗り換えのような、人いきれと複雑に道が入り組むメディナでは、地図は役に立たない。


メディナ(旧市街)の入口、バブ・エル・バール(フランス門)

メディナの内部は屋根に覆われたところも少なくない

差しを避けて、メディナの細い道は屋根代わりのシートが被せてあったり、完全に路地の上に屋根が覆っているところも多い。日本の市場、神社の参道などにも通じる、懐かしい雰囲気だ。雰囲気は人波に乗って奥へ奥へと進むと、塀に囲まれた大きな建物に突き当たる。入口が閉じていれば何かの大邸宅のようにも見えるここが、メディナの中心に位置する大モスクだ。午前中の観光タイムであれば、非イスラム教徒でも中に入ることができる。

 モスクを中心に実に様々なスーク(市)が展開している。スークとはメディナの中の専門商店街のようなもので、同業の店が集中している一帯だ。世界的にも大規模なチュニスのメディナには様々なスークがある。シェシア、洋服、綿製品、香水、革製品、貴金属、絨毯、生鮮品、肉、日用品などを始め、枚挙に暇がないほどだ。

地元住民と観光客とでごった返す、メディナのスーク

 メディナ観光で立ち寄ってみたいのが、客寄せのために屋上を開放している数件の絨毯屋だ(詳細は、英文ガイドブックのラフガイドRough Guideシリーズなど参照)。決して姿を見せない大モスクのミナレットが、白い家並みの中に鮮やかに浮かび上がる(写真1)

 大モスクの近くには高価な品、外れの居住地区には生活関連など、それぞれが機能的に配置されている。特に食品や生活用品の地域に入ったら、その人ごみは想像を絶するほどだ。前に進むことも後ろに下がることもできず、どちらに進んでいるのか見当がつかなくなる。そんな中をチャイを売る少年や、路地の真中に屋台を止めて商売する物売りが、さらに混乱に拍車をかける。

路地奥の貴金属店

 実は、スークの中にも人の流れがある。肩を触れ合うような雑踏は、ごく一部の幹線をなす路地でスークとなっている部分だけだ。裏道は人影のない静寂の世界で、その対比に驚かされる。ひっそりとした生活シーンを覗いてみるなら、足を踏み入れてみるのもよい。

 チュニスのスークは長径約1.2km、短径約0.8kmの卵型をしている。本来簡単に歩ける大きさなのだが、その複雑さ、その人混みは、半端なものではない。できれば、数時間かけてゆっくり見て回りたい。

西端に立つユセフ・デイ・モスクはアンダルシア風