"地中海,トルコ,ケコヴァ,ケコワ,kekova,水中遺跡"
水中に沈んだ都市
Kekova
ケコヴァ
(トルコ)♦♦
海に沈んだ都市、ケコヴァ

殻変動で陸地が海に沈むことは知られているが、トルコの都市ケコヴァは、かつて繁栄していた都市が半ば海中に没し放棄された、その姿を目の当たりに出来る珍しい遺跡だ。
 この遺跡は、ケコヴァ島というトルコの地中海岸の最も辺鄙な沿岸の島にあり、アプローチが大変不便だ。本土の海岸沿いの道路もないため、最も近い漁村のウチャウズから船をチャーターするか、カレ、カシュなどの離れた町からクルーズ船で訪れるしか方法がない。しかし人気のない緑豊かなケコヴァ島の海岸の穏やかな海に沈む廃墟を見たときの感動は、訪れる価値を保証する。ケコヴァ島は無人島だがヤギが放牧されており、船が近づくと、もの珍しそうに我々を眺めている。

海底には割れた壷がそのまま放置されていた
海中へと続く階段

コヴァは、少なくとも紀元前5世紀には、この地方の中心都市として栄えていたと考えられており、現在見られる遺跡は市の中心部の施設であったらしい。紀元前にはリキアの都市、その後もビサンチン帝国下で栄えたようだが、度重なる地震に襲われいつしか放棄された。対岸のカレ(シメナ)も今では数十人が住む小村だが、同様に海上、海中に立派な遺跡を擁している。

海中に残る立派な建物の土台
 透明な海中数メートルに沈む建物の土台のなかには相当な大きさのものが見られ、またグラスボートをチャーターすれば、海中に沈んだ壷や生活用具などもはっきりと見える。最近まで中世の教会の一部が水際に残っておりメインスポットになっていたが、10年程前の嵐で跡形もなく崩壊した。刻一刻と自然に返っていく過程に文明のはかなさを感じずにはいられない。
 トルコには、調査の手の入っていない紀元前の遺跡が大変多いが、ここもまだ殆ど手つかずのままだ。伝承によれば、かつて本土と繋がっていたとのことであるが、海底まで少なくとも100メートルの深さがあることを考えると、俄かには信じがたい。