「地中海生活」 1999年 夏号 ( 5月12日発行 通算第14号 ) | MAP & TRAVEL |
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タオルミーナについて |
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シチリア島は、ローマ共和国以来の長い歴史を持つイタリア本土とは異なり、北はノルマン、南はアラブ、東はギリシアと、さまざまな文化の支配を受け、それらが混ざり合った独特の雰囲気を持つことで知られています。
タオルミーナはそんなシチリアの良い部分ばかりを集めた、絵に書いたようなすばらしい町であり、カプリ島と並んでイタリアでも最も快適なリゾート生活を送ることのできる町の一つといえるでしょう。観光地といっても歴史がある落ち着いて静かな田舎町であり、決してけばけばしく騒々しい感じはありません。
海上200mの傾斜地の斜面に作られた町は、すばらしい海の眺めや美しい白砂のビーチ、そして新鮮な海の幸を提供しますが、同時にエトナ山の眺めや崖の上の城跡、カステルモーラの町など、山に囲まれた町でもあります。また遠く紀元前のギリシア領時代の遺跡や、趣のあるリゾートホテルやヴィラの数々、おいしいレストランに、充実したショッピング街と、全てが揃った完全無欠なリゾートです。
この町自体の楽しさに加え、周辺にも観光地には事欠かず、少なくとも1週間は滞在したい町です。
ただ付け加えるなら、あまりにも美しく整ったこの町は、他のシチリアから見ると別世界である側面も否定できません。シチリアの荒涼とした自然、うらぶれた旧市街、今でも残るアラブの町並みや回教寺院跡、ギリシア正教のモザイク画など、この美しい町からは窺い知ることはできません。シチリア全体に興味がある方は、この町と同時に他のいくつかの町を訪れることをお勧めします。
タオルミーナには少なくとも紀元前12〜13世紀には先住民族のシクリ人が住んでいましたといわれています。
一方ギリシア人は紀元前8〜6世紀にかけて地中海全域に進出し、この町のすぐ下に植民都市ナクソスを建設しました。そして紀元前358年に、ナクソス市民がここにタウロメニウムを建設し、現在の町の基盤ができました。有名なギリシア劇場もこの時期に作られました。
しかし紀元前3世紀にはもう町はローマに占領されます。そしてローマ化が進み劇場もローマ風に改装されました(そのため有名なギシリア劇場は、むしろローマ風建築になっています)。
続いてビサンティン帝国領として再びギリシアの時代を送ったあと、9世紀にはシチリアは北アフリカ・チュニジアのアグラブ朝に激しく責められます。主要都市が次々と陥落し、ビサンティン帝国はシチリアの首都をここタオルミーナに移転し、最後の抵抗を続けました。天然の要塞のような地形のため難攻不落であった、タオルミーナも902年に陥落し、アラブの一角となりました。しかし当時世界的にも先進国であったアラブの支配下に入ったことは、シチリアの発展に大変プラスであったと考えられています。
次にシチリアにやってきたのはノルマン人でした。もともとは北欧の海賊に起源があるわけですが、彼らはシチリアから南イタリアにかけてを占領し、王国を建国しました。彼らは現在のキリスト教徒支配下での島の発展の基礎を築いたとして高く評価されています。1086年、シチリアの中では最後の方に、この町もノルマン王朝の手に落ちました。
その後他のシチリアの町と同様に、ドイツ、フランス、スペイン等の支配を代わる代わる受け入れながら、1860年にサルジニア王国(イタリアの前身)に併合され、現在に至ります。
過去の栄光も忘れ去られ、その時点では地方の名もない寒村であったタオルミーナが、リゾートとして有名になっていったのは、その後のことでした。
夏は地中海性の気候で毎日晴れた暑い日が続きます。春・秋・冬は曇りや雨の日もありますが、冬の間も極端には冷え込まず大陸ほどは雨が多くないので、避寒地としても良い場所です。実際クリスマスから正月にかけてはある程度混雑します。とはいってもメインのシーズンはやはり夏であり、島の面積の割にホテルの数は多くないので混雑します。ただし広い島なので夏季でも交通渋滞はあまりありません。
タオルミーナは滞在型のリゾートに最適の町であり、最低でも3日、できれば1週間以上滞在することをお勧めいたします。
観光目的で訪問する場合には、小さい町なので1時間で一回りすることも可能です。マドンナ・デッラ・ロッカやカステルモーラもタクシーを含めても半日で回ることは可能です。ただ単に観光資源として見た場合は、シチリア島内の他の有名な都市よりも見劣りするのは確かです。
日本からタオルミーナに行くには、イタリアの主要都市またはミュンヘンを経由してカターニァ空港に飛ぶことになります。カターニァ空港から高速でタオルミーナ北インターまで約62K、そこから町まではすぐです。タクシー、バス、レンタカーなどが利用できます。鉄道もありますが、カターニァ空港、タオルミーナの町とも駅から離れているので便利ではありません。
なおスケジュールは1999年夏期のものです。
ホテルは数多くありますが、町の中心にあり眺めや雰囲気も最高な良いホテルから、乗り物で町まで行く必要がある割と普通の雰囲気のホテルまで、本当にさまざまです。目的や予算に応じて選ぶことが出来ます。
お勧めできる良いホテルは無数にあるわけではなく、早めに予約する方が無難と思われます。市街地から徒歩10分以内で標準的なツインで30万リラ前後であれば、それほどはずれはないでしょう。またやや離れたところでも、ここで紹介したヴィラ・ドゥカーレや、海岸の岬に立つカポ・タオルミーナなど個性的な宿もあります。ここは観光に来る町ではなく、リゾートライフを楽しみに来る町ですので、タオルミーナではホテル代を奮発することをお勧めします。
タオルミーナは比較的高級なホテルが多く、夏季なら1室30万リラ(約21000円)程度が標準と思われます。ただすばらしいホテルが多く、この料金でも決して損をすることはないでしょう。気をつける点としては、冬期閉鎖するホテルが多く、またホテルによっては予約条件として最低泊数(例えば3泊以上など)を決めているところもあります。
ヴィラ・ドゥカーレのこの号で紹介した14号のセミ・スイートは1998年7月現在で1室41万リラでした。
町の良い位置を占領している、修道院を改装したサン・ドメニコ・パレス・ホテルは有名なすばらしいホテルですが、1室62万リラからとなります。
海岸に下りれば料金もやや安くなり、隣町あたりまで行けば、イタリアの通常の相場に近い10万リラ台となるようです。
広く活動するにはイタリア語が必須ですが、高級ホテルのフロント、観光レストラン、ブティック、観光名所などでは英語も通じます。またごく簡単なイタリア語ができれば、買い物、食事などでは全く不自由ありません。。
もうひとつの崖の上の町フォルツァ・ダグロへは約10キロ(夏季はバスあり)、またこの周辺の海岸は50キロにわたってすばらしいビーチが続いています。
その他50キロ以内の車で小一時間で行ける範囲内には、東部シチリア一の都会カターニァ、海峡の町メッシーナ、リフトでかなり上まで登れる名峰エトナ山などがあります。